The AKKESHI 厚岸(あっけし)蒸溜所 堅展(けんてん)実業(株) 北海道

厚岸蒸溜所の誕生

洗練された品格漂う風貌で目を引く東京人、樋田恵一(といたけいいち)氏。堅展実業株式会社社長であり、2016年11月より稼働した北海道厚岸郡厚岸町の厚岸蒸溜所のオーナーでもあります。

アイラモルトをこよなく愛し、ついにはこの日本でアイラのようなウイスキーを自ら作りたいとの想いが高じ、場所探しに奔走しました。そして、結果的にここ以外は考えられないと選んだ土地が、北海道の厚岸(あっけし)町でした。厚岸湾と厚岸湖を望む厚岸町は海霧に覆われる事でも有名です。冷涼にして湿潤、そしてアイラ島を凌ぐほどの豊かな海産物が一年を通じて目白押しなのです。特に、一年中生牡蠣を食べられるのは、日本広しと言えど厚岸だけです。これは樋田氏の心をくすぐりました。

「自分達が作ったピーティなモルトを厚岸産の生牡蠣にかけて食べられるなんて最高じゃないか!」

 

そして2014年には、厚岸町の土地を購入し、まずは国内他社蒸溜の原酒で熟成に関する調査を開始します。熟成環境に自信を得た樋田氏は、着々と2016年の操業開始に向けての準備を重ねていきます。

ラムサール条約(水鳥湿地保全条約)にも登録されている別寒辺牛湿原(べかんべうししつげん)に隣接する土地のピート層を掘り出し、発泡スチロールを敷き詰めて作った基礎(コロンブス工法)の上に鎮座したその白い建物は、 まさにピート湿原に浮かぶ蒸溜所と言えます。

 

☆お酒を愛する人のためのweb雑誌“DRINK PLANET”様の樋田恵一氏の必読記事はこちらから http://www.drinkplanet.jp/bartenders/view/86



北の大地が育むウイスキー ~ジャパニーズアイラモルトを目指して~

蒸溜所の北を流れる尾幌川の上流域を目指すと、小さな川幅のホマカイ川に辿り着きました。スコットランドで見たのと同様で茶褐色の澄んだ水でした。

この付近に貯水池があります。ジャパニーズアイラモルトを標榜する厚岸蒸溜所ならではの“水”がここに湧き出しているのです。

蒸溜所に隣接して広がる別寒辺牛湿原を流れる川。下の動画はコンキリエさんの空撮鳥瞰映像。丹頂鶴になった気分で厚岸モルトと共にご覧下さい。

愛冠(あいかっぷ)岬からは、アイラ島にも負けない、絶景が見られます。愛冠岬へは町の中心から車ですぐのところです。駐車場から展望台までは10分ほど。林の中は鹿の群れが住んでいます。

昆布漁に向けて、一斉にスタートする真っ黒に焼けた男たちの舟。獲れた昆布を砂利の上に晒して乾かす様も壮観です。

厚岸町内の森を、立崎所長自らが同行し、ミズナラの古木を選定し、伐採します。最初に出来上がった厚岸産ミズナラ樽には、2018年の8月にニューメーイクが充填され、眠りに就きました。以後、定期的に町内の森に入り、ミズナラを採取します。原生する生きたミズナラから選ぶことができるのは厚岸、そして秩父の強みと言えます。

調達したミズナラ材は地元のベカンクラフトさんで乾燥、製材された後、洋樽工場に運ばれ、パンチョン樽に組まれます。漏れ易い材の為、厚く製材されており、通常のパンチョンが480Lなのに対して、ミズナラ樽は450Lほどになります。

蒸溜所の周辺にはエゾ鹿の家族も訪れます。町内には希にヒグマも出没し、湿原や厚岸湖にはタンチョウヅルやオジロワシなども羽根を休めています。

特筆すべきは、水源のホマカイ川(尾幌川上流域)。まさにスコットランドのごとくピート層を通って湧き出たその水は茶褐色をしているのです。同時に、近い将来には、厚岸湾の影響を受けた、海藻を含む海ピートと、内陸の牧場が広がる高層湿原地帯の山ピートの2つの個性を持つピートを使用し、自家製のピーテドモルトも製造する予定なのです。ピートと一言で言っても、1mm堆積するのに1年もかかるとの説もあります。植物や海藻が完全に分解しない状態で堆積するため、非常に繊維質の多い土なのです。それを1メートルほど切り出し、数カ月乾燥させます。(ピートは80%が水分)一度発火すると、大量の煙を発生し、長時間燃え続けます。泥炭層の山火事がなかなか消えないのはこのためです。ピートを使った発電所も世界には存在しますが、今は資源保護の観点から、使用は厳しく管理されています。

まさに大地の恵み(歴史的遺産)を贅沢に使わせて頂くのがピーテドモルトウイスキーなのです。

 

厚岸の夏は最高25度前後、真冬は氷点下20度前後に達することもあり、他の国内蒸溜所と同じく、その気候には大きな寒暖差があります。一年を通してあまり気温の変わらないスコットランドには無い日本ならではの気候です。とりわけ寒冷低温帯での寒暖差は、本州や九州の蒸留所には無い北海道道東厚岸町の大きな特徴です。

 

アザラシの生息する大黒島付近の荒波で昆布漁をする小船が、レースさながらのスピードで波を跳ねる様は大迫力です。そんな厚岸湾のミネラルを含んだ海霧が、勢いよく空を駆ける風景はまさに映像美の世界。その霧が熟成庫に降り注ぎます。この湿潤な気候が旨い原酒の熟成に欠かせません。さらにはアイラ島と同じく、海霧が運んで来る塩分が、熟成中の原酒に与える影響も期待できます。

 

一方で、厚岸町内では大麦の生産も始まっています。同じく町内の森林での樹齢100~200年に達するミズナラの伐採が北海道庁森林室の管理下で行われます。放っておけば立ち枯れしてしまうミズナラの老木が厚岸蒸溜所に譲渡されるのです。1年ほど自然乾燥した後、製樽工場にてパンチョンのミズナラ樽として成型されます。通常出回る旭川産のミズナラではなく、厚岸産のミズナラ樽の誕生です。

 

厚岸産大麦、厚岸産ピートとそのピート層を通った水源、厚岸産水楢(ミズナラ)樽、厚岸湾の海霧に包まれる熟成庫、それらすべてが繰り出す厚岸産モルトウイスキーを、蒸溜所では“AKKESHI ALL STAR(S)”と呼んでいます。そう遠くない将来、皆さんはそれを口にする瞬間に立ち会うことになるでしょう・

 

このように、厚岸蒸溜所は圧倒的な大自然の恵みを受けたポテンシャルの高いウイスキー造りを世界に向けて発信して参ります。

 

 

 

2018年に厚岸湾を望む丘の上に建てられた3番目の熟成庫。隣にはブレンダー棟が建設されました。厚岸湾と厚岸湖を眺めながら、テイスティングが重ねられていきます。

JR厚岸駅前のホテル五味さんの前を家族で散歩するエゾシカ。町を移動していると、そこかしこで鹿の群れに遭遇します。レンタカーで厚岸を回られる方は、雪道の凍結よりも、鹿との衝突事故に気をつけないといけません。



男たちの夢 葛藤 そして 覚悟

厚岸蒸溜所の誕生には、多くの人達の友情と支援がありました。当事者達は敢えて語ろうとしませんが、各地の新規蒸留所の支援をしているかのVW社が唯一正式に技術指導の契約をしている蒸留所でもあります。プロジェクトの初期段階から、VW社社長と樋田氏はスコットランドにも同行し、ポットスチルなどの蒸留機器の製造計画を進めてきました。

 

現場では、蒸溜所所長の立崎勝幸氏により徹底的な品質管理や数値管理がなされています。特に立崎氏は濃厚で澄んだ黄金色の麦汁を絞ることに並々ならぬこだわりを持っています。それはまさに超一流の和食の料理人がとる出汁のよう。光り輝く甘く芳醇な液体。それこそが厚岸モルトの様々な要素のベースとなります。

 

ちなみに立崎所長は大手乳業メーカーで管理職を務めており、その取引業務の最中に堅展実業の樋田社長と出会いました。樋田社長は立崎氏の卓越した才能とサラリーマンらしからぬ情熱に注目していました。ある時樋田氏は、ウイスキー製造の夢を立崎氏に告白し、もし現実となったら力を貸してほしいと言葉を投げ掛けたのです。

 

そして、その日は意外にも早く突然やってきます。

「蒸溜所を開設するんだけど、手伝ってくれるって言ったよね?」

 

「えっ、ええっ?!!!.......まじですか?」

 

立崎氏は一旦は断ったものの、その心は揺れに揺れました。そして、当然ながら家族、親族もすぐには受け止められませんでした。それもそのはず。大企業で管理職にまで上り詰めたのに、なんで50歳近くになって、、、。しかも、遠く離れた北海道の道東に単身で行くなんて、、、。

 

しかし、立崎氏は決断します。自分の残された人生を樋田社長の夢に掛けると。話合いの末、奥様はじめご家族もパパの想いに心を添えてくれるようになりました。程なくして、国内の蒸留所で厚岸のスタッフと共に修行を開始します。その後、いよいよ家族を置いて、遠く離れた北海道厚岸に移動したのです。落ち着く間もなく、マッカラン蒸溜所など世界中の有名メーカー御用達の蒸留機器メーカーであるスコットランドのフォーサイス社から数名単位の腕利き職人が入れ替わりで厚岸に滞在し、数ヶ月に渡ってフルラインの器機の設置、稼働試験の作業を共に遂行しました。麦芽の粉砕機を除き、糖化槽、発酵槽、蒸溜釜まですべてがフォーサイス製で、遠く離れた日本の地で、施工、蒸溜実務の指導まで受けた蒸溜所は世界でも厚岸のみです。そしてついに、2016年11月には光輝く初のニューメイクスピリッツ(ニューポット)を無事抽出したのです。

 

操業開始後は休みの日も居ても立ってもおられず、気が付けば蒸溜所に身を置いている日々が続いています。夜には、スタッフと共に他社ウイスキーのテイスティングの日々。

 

立崎所長は笑顔でこう語ります。

 

「人の一生で、蒸溜所の立ち上げから製造までを責任者として任せられるような経験は、これを逃したら無いと思うんですよ。自分は何てラッキーなんだって。本当に、樋田社長には感謝しかありません。」

 

ところで、厚岸蒸溜所のハウススタイルはアイラ島のごとくヘヴィリーピーテド麦芽を使用したスモーキーなモルトです。一方で、2018年2月27日リリースの初のニューボーンウイスキーは、ノンピート麦芽を使用したバーボン樽熟成の原酒(5ヶ月~14ヶ月)となります。これは技術提携をしているVW社により、ピーティな原酒を仕込む前に、まずはノンピートの原酒で腕を磨き、品質の向上を見極めてから、満を持してピーテドモルトで仕込むように指導を受けているからです。厚岸蒸溜所の実力の基礎となる部分を、愛好家に判断して頂き、忌憚ないご意見を伺い、今後の原酒の設計の参考にしたいと立崎氏は言います。

 

その後2年の間にニューボーンのバリエーションが3回(3種)(ピーテド、ミズナラ樽他)披露されます。厚岸蒸溜所の創成期を象徴する商品となるので、Foundations Seriesと命名されました。

そして、東京オリンピックの頃には、初めての3年熟成のシングルモルトウイスキー“厚岸”がお披露目となります。ジャパニーズアイラモルトを目指した厚岸モルトウイスキーは、やがてはアイラを超えるのか?また師匠であるVW社のライバルとなるのでしょうか?乞うご期待!

 

イチローズモルトの監修・技術指導
  • 厚岸 NEW BORN Foundation1 ノンピート バーボン樽 4~15ヶ月熟成 200ml 3300円(税別)完売しました。



 

厚岸ニューボーン発売に寄せて

 

元々厚岸蒸溜所の方針としては、ニューメイク(ニューポット)(樽詰めする前の透明な原酒)やニューボーン(3年以内の熟成原酒)は製品としては発売しないとしておりました。スコットランドのレギュレーションに従えば、3年以上熟成した原酒でなければウイスキーと呼べないことから、シングルモルトスピリッツを発売することで、消費者に誤解を招くことを良しとしなかったからです。しかしながら、日本国内や海外の愛好家から「3年待てない」「何とか熟成途中の原酒を味わえないか」と言った要望が数多く寄せられたため、蒸溜所の創成期(=the time of foundation) の若い(=new born)原酒をお披露目することを熟慮の上決定するに到りました。操業開始から3年を経過した後は、ニューメイクはもちろんのこと、ニューボーンも発売する予定は無いそうです。ウイスキーは3年で大人として扱われます。2016年11月に産声を上げたばかりの蒸溜所の成長の最中にある初々しい様を垣間見ることができる同時代の愛好家は幸運であると言えるでしょう。そんな方々の温かい応援のもと、厚岸蒸溜所の子供達はこれからさらに化学的な様々な反応を重ねて熟成していきます。エンジェルが見守る樽はまさにゆりかごのように行ったり来たりを繰り返します。

2018年8月には、厚岸蒸溜所が目指すジャパニーズアイラモルトであるピーテド麦芽のニューボーンがリリースされる予定です。まずは皆様にスモーキーでない「ノンピート麦芽」のバーボン樽熟成原酒をお届け致します。夏の盛りには、さらに成長を遂げたAKKESHIに出会えることを、皆様と共に期待しております。

 

 


2018.6.26更新 新商品情報

厚岸 ニューボーン ファウンデーション2 “ピーテッド” バーボン樽熟成 8~17ヶ月熟成 58% 200ml 4000円(税別

The AKKESHI NEW BORN Foundation 2 “PEATED ”Bourbon Barrels 8-17 months matured 58%ABV 20cl 4000JPY

 

5月下旬に選定された20数丁のオーク樽原酒は、ブレンディングタンクへと移され、1ヶ月ほどのマリッジ期間を経て、6月25日より神戸のボトリング工場にて無事瓶詰めがスタート致しました。

 

ジャパニーズ アイラ モルトをハウススタイルとして標榜する厚岸蒸溜所のマイルストーンとなるであろう記念すべき製品の誕生です。ヘヴィリーピーテッドの樽出し原酒の味わいを愉しむ為、ほとんど加水せず、58%での仕上がりとなりました。

発売時期 2018年8月27日 完売しました。

 

コンキリエさん主催の厚岸蒸溜所見学ツアー

 

宿泊は、ジャパニーズウイスキーのレアボトルがずらりと並び、ワイン、日本酒、チーズ、そしてボリュームたっぷりな厚岸の味覚を楽しめるホテル五味さんがお勧めです。夏休みに厚岸旅行をご計画の方は、お早めに予約をして下さい。きっと素晴らしいバカンスになることでしょう!

 

厚岸の牡蠣は日本で唯一1年中出荷されることでも有名です。夏のミルキーな牡蠣と、ピーティーな厚岸 NB 2の相性はアイラ島のそれに劣らない感動的なマリアージュとなるでしょう。牡蠣を合わせたいという方も、お早めにオーダーした方が良さそうです。カキエモンなどのブランド牡蠣は品切れになることもありますので。(厚岸町内の情報は上記記述をご参考にしてください)

 

厚岸ニューボーン ファウンデーションズ3 ミズナラカスク ご購入

(画像をクリックすると、販売ページに移行します)

 

 

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